ラプラス条件

 ある地点の緯度、経度、方位角は、天体と時計を使って決めることができる。それが天文緯度、天文経度、天文方位角である。

 この観測に使う経緯儀や子午儀は、水準器によって水平軸の水準を保ち、垂直軸を鉛直線に合わせるから、天文値はすべてその地点の鉛直線に支配される。この鉛直線は、水準面が準拠楕円体面と平行でない限り、楕円体面の法線とはくい違っており、いわゆる鉛直線偏差が生ずる。そこで、楕円体に準拠して三角測量で決めてきた三角点の測地的な緯度、経度、方位角と天文的なそれらとの間には、鉛直線偏差に基づくある一定の差が含まれる。

これらの関係を次式で表わす。
AA−AG=(LA−LG)sinBG

 ここにA、Lは方位角および経度で、添字のAは天文値、Gは測地値、またBGは測地緯度である。この式を鉛直線偏差に関するラプラス方程式と呼ぶ。三角測量で決める緯度、経度は天文値とは一致しないが、それなりに良好な精度で得られている。

 しかし、方位角は正確さが少し落ちるので、上の方程式を三角網の方位規正の条件に使う。すなわち、ある三角点で天文的な緯度、経度、方位角を観測したとき、三角測量による測地方位角を上式の計算値に一致させる条件をつける。これがラプラス条件の思想である。天体力学や星雲説で有名な、かのラプラスがメートル制定のための三角測量の時代に、どうして考えついたのだろうか。彼は地球を数学的な形と比較して、この式の一般形を導いたが、それは「天体力学」(英訳第2券385頁)に出ている。

LinkIcon(社)日本測量協会発刊 月刊「測量」より抜粋