フリーネットワーク解法

 器械を使う測定には誤差がつきまとう。水平位置の基準となる三角点座標を決める三角測量でも、網をつくっている個々の三角形の内角や辺長を測るから、当然誤差が生まれる。このような誤差を伴った仕事を、どのように処理すれば、もっともらしい成果が得られて、しかもその成果がどのくらい信用できるであろうか。これに答えたのが19世紀前半に活躍した大数学者ガウスが創案した最小二乗法である。最小二乗法を解説すると1回分の紙数が必要なので、それは飛ばすが、ともかく三角網や水準網の処理に使った最小二乗法を、日本では網平均という呼び方をしていた。

  さて、2回の三角測量から地殻変動を求める場合、1点1方位または2点を不動として網平均を行うと、不動点以外の点ではベクトルの形で変位量が得られる。関東大地震をはじめ、多くの大地震に伴った地殻変動は、この方法で求められた。しかし、これでは不動点の取り方次第で、変位がどのようにでもなる可能性がある。

 そこで不動点の仮定なしで計算し、生ずるであろうところのベクトルの2乗の総和が0になるという条件を加えると、一意的な変位が得られる。創案者ミッターマイヤー・ベルリン工科大教授の論文にはfreenetworks調整の言葉が見える。日本ではフリーネット解法と呼ばれているが、自由網平均なら放送網と同じで意味が通ずるが、片仮名ならフリーネットワーク解法と呼ぶほうが正確ではなかろうか。

LinkIcon(社)日本測量協会発刊 月刊「測量」より抜粋