VLBI

 VLBIはVery Long Baseline Interferometryの略字体で、超長基線干渉計という日本語が当てられている。英語のverylongに対して超長とは少し大げさだが、一等三角測量の基線長2〜5kmであるのに、VLBIで扱う基線は普通500〜5,000kmであるから、まあよいだろう。

 測定原理は光の干渉計と同じである。いま、非常に遠方の光源からの光を、ある基線の両端点で受けるとしよう。光源が星のように事実上無限遠の距離にあれば、例えば地球のどの地点に到達する光線も、互いに平行になっている。そして、基線が光線方向に直角ならば、光源から両端点までの光路長は等しいから、2光線を再び合成した場合、光の位相は一致していて明るく見える。 

 しかし、基線が光線と直角方向からわずか傾いていると、2光線の間に光路差が生じ、それが半波長あれば合成波は打ち消し合って暗く見える。実際には半波長の倍数ごとに光の明暗が繰り返されるから、いわゆる干渉縞ができる。以上の話から、光の波長、基線と光路線との角度、光路差、基線長といった諸量の間には、何かしら一定の関係式が成り立つことが想像できるであろう。

 いま、光の代わりにクエーサー(電波星)からの電波を使い、5,000kmというような超長距離の受信基線をつくる。そして非常に高い分解能を利用すると、クエーサーの大きさや電波の強度分布、地球の運動、世界的な測地網結合やプレート・テクトニクス的な運動などを論ずることができる。

 VLBIは電波星からの電波を、遠く離れた二つのアンテナで受信して干渉を起こさせる。光干渉計から類推すれば、同時に受信した二つの電波を、同じ長さのケーブルで受信機に導けばよい。しかし、分解能を上げるためにアンテナ間の距離、つまり基線長を増大させると、ケーブルで結ぶわけにはいかない。

 いま、図のように基線に直角な方向だからξだけ傾いて電波星が見える場合、基線長をl、波長をλとすれば、光路差BCはlsinξで、B点における電波の位相差はφ=2πlsinξ/λとなり位相差は星の方向の関数であることがわかる。実際には、受信電波に局部発振信号を積算し、中間周波信号に変換して増幅などを行う。この局部発振器は各観測地におかれた原子時計による周波数標準を使う。中間周波信号は磁気テープに記録され、あとで2点の受信データをコンピュータ処理して、干渉と同じ効果をあげさせる。

 さて、光路差は電波星の日周運動に伴って時間的変化をする。この変化は基線方位にも関係するが、ともかく、ある種の曲線を描く。この曲線は光路差、基線長と方位、電波星の赤径・赤緯の関数で、この関係を解析すれば、結局基線のベクトルとしての長さを決めることができる。VLBI用の電波星(クエーサー)のカタログには、100個余が登録されている。

LinkIcon(社)日本測量協会発刊 月刊「測量」より抜粋