地球の形と大きさ

 球面に立てた垂線は、すべて球の中心に集まる。この性質を逆に使うと、曲面が球面であることが確かめられる。残念ながら地球は球ではない。地表面では重りをぶら下げて垂線をつくる。この垂線は南北両極点と赤道以外では地心に向かわないが、全体としてはある種の幾何学的関係をつくる。この幾何学的関係を満足させる曲面が、回転楕円体の表面である。すなわち、赤道を長軸、極軸を短軸とする楕円を、短軸のまわりに一回転した形となる。

  地表面における垂線は、要するに重力方向を表すから、地球の形を決める問題は地球上での重力分布を実測すればよいことにもなり、これはさらに地球の重力に支配されて運動する人工衛星の軌道解析へと飛躍した。

 地球の形と大きさを決めるほかの手段としては、緯度1°に相当する子午線弧長が回転楕円体の幾何学で計算されることから、三角測量を利用することができる。この仕事は測量の範囲が広いほど正確な結果が期待され、人工衛星の光学的追跡による大陸間の測地網結合にまで発展した。     

 現在確定している地球の形と大きさは、このような衛星測地技術のたまものであって、日本が地図の基準面として採用しているベッセル楕円体と比較すると、赤道半径で740m大きく、極半径で673m大きい。これらの数値はもはや大きく改訂されることはない。長い間の測地学の最大目標は今世紀でほぼ解決され、今後の地球の形の問題は、回転楕円体面から大きくはずれている地域の存在理由と、その時間的変化に目が向けられるであろう。

LinkIcon(社)日本測量協会発刊 月刊「測量」より抜粋